連載小説「潮風の行方」第五章 其々の思い 2話
俺は、冷静に答えた。 「俺は最初から、理穂が思うような男じゃ、なかったんだ」 理穂は潤んだ瞳のまま、こっちを見ていた。その珍しくかよわい瞳に、俺はもうこれ以上、偽りの自分を見せるのはよそうと決心をした。 「俺は介護に...
連載小説「潮風の行方」第五章 其々の思い 1話
朝から空は青く、快速アクティーの車窓からは、寝不足が続いている俺の目には眩しいくらいに輝く、相模湾が見えた。久しぶりの見慣れた景色に、郷愁と言えば大袈裟すぎる、軽い懐かしさを感じる。 海は、人の心を映し出すと言われる...
連載小説「潮風の行方」第四章 波乗りの想い 1話
「賢ちゃん、あんたこの前連れ合いに振られたばかりじゃなかったかい? なのにもういい人が出来ちまったのかい?」 まったく、このくそババアは、朝っぱらから碌な事を言わない。車を貸してくれと頼んだだけで、人の気持ちを逆撫です...
連載小説「潮風の行方」第四章 波乗りの想い 2話
待ち合わせ時間ちょっと前に、海から上がった。 砂浜を少し歩き、ファーストフード店に一番近い階段から、駐車場へと上がって行った。しかし登りきったとたん、驚いた。 目の前に、既にウェットスーツに身を包み、脇にボディボー...
連載小説「潮風の行方」第四章 波乗りの想い 3話
ポイントを選んでだいぶ移動したので、下りた場所からは離れてしまった。春菜さんと浜を歩いて、戻ることにする。 歩き出せば、砂の抵抗もあって、少し暑いと感じるくらいに体温が上がる。今日は本当に、十一月にしては気温が高い。...