連載小説「潮風の行方」第二章 出会い 1話
「おはようございます・・・ 昨日から特養で実習させていただいています、県立医科大学四年、藤原賢治です。よろしくお願いします・・・」 今までの実習でも、更衣室に入る瞬間は、特に緊張した。だから自分でも情けなくなるくらい...
連載小説「潮風の行方」第三章 海洋歴史ロマン 1話
「工藤さんは昔、サーフィンをやっていたんですか?」 唐突に、昨日の風呂場での一件を切り出した。 「サーフィンって、あの、海でやるサーフィンのことだよね?」 川島さんが、怪訝そうな表情で「サーフィン」という言葉を強調し...
連載小説「潮風の行方」第七章 別れ 2話
立ち上がった。 体は勝手に動き出し、無意識のうちに、上着をはおった。 一階に降りて行って、居間にあるばあちゃんの家の鍵を握ると、ばあちゃんが寝ている離れに、走った。 「こんな時間に、いったいどうしたんだい?」 夜...
連載小説「潮風の行方」第七章 別れ 1話
「ばあちゃん・・・ 書生の名前を、聞かせてくれないか・・・」 静寂を破って、単刀直入に、そう訊いた。 俺はベッドの横で、ばあちゃんの顔を見て、座っていた。 随分、小さな顔になったものだ。 目を閉じて、ゆっくりと呼...
連載小説「潮風の行方」第六章 介護士の想い 3話
「見て! 綺麗な富士山!」 春菜さんが、全開にされたキャンバストップから吹き込む風の音に負けないように、大きな声でそう言った。 国道一三四号線を、西湘バイパス方面に向かって走っていた。 相模川を渡る橋の上から、湘南...